光のもとでⅠ
 結果、適当なところに車を停めて車の中で話すことにした。
 ちょうど車を停めたところ数メートル先に自販機があったので、簾条さんにはミルクティと自分にはコーヒーを買って戻る。
 それを手渡すと、簾条さんは嬉しそうに両手で受け取った。
 それに、翠葉の癖を重ねる。
 翠葉もカップや飲み物を持つときは両手で持つんだよな……。
 けれど、プルタブを開けた彼女は片手で飲んだ。
 あぁ、やっぱり翠葉とは違う。
 どうしてか、俺は女の子を見るとすべてを翠葉と比べる癖がある。
 比べてどう、というわけではなく、ただ無意識に比べてしまうだけ。
「で、話ってなんだろう?」
 自分から切り出すと、
「言いづらいことなので、できれば蒼樹さんのお話を先にうかがいたいのですが……」
 簾条さんが躊躇うなんて珍しい……。
 とはいえ、俺の話も決して話しやすい類なわけではない。
「ジャンケンしない?」
「蒼樹さんのお話も話しづらいことなんですか?」
「割と? 言い出せずにギリギリの今日になったくらいには」
 今週中には静さんに結果を報告しなくてはいけない。
 ジャンケンをしてみたものの、俺はグーで見事に負けた。
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