光のもとでⅠ
「先週の土曜日に胃潰瘍で入院」
 秋斗先輩が端的に答えた
 それに補足するように司が口を開く。
「輸血が必要なほど吐血して、翌日日曜に手術。現在入院三日目」
 ……それってかなり大ごとだったんじゃ……。
 あぁ、もしかして唯が今忙しいことになってるのは秋斗先輩が仕事をできない状態だから、か?
 そう考えればすべてに合点がいく。
「っていうか……先輩不摂生しすぎなんじゃないですか? それか、コーヒーの飲みすぎ。いや、アルコールか?」
 思わず力が抜けてその場に座り込んでしまう。
 本当はさ、次に会うときは翠葉に何をしてくれたんだ、と掴みかかるつもりでいた。
 でも、現時点でふたりは付き合っているわけで、キス程度のことならふたり合意なら問題ないわけで……。
 それをどうこう言うつもりはないんだけど、あの翠葉のうろたえぶりと擦過傷の惨状を見てしまうと、合意だったのかすら怪しいわけで……。
 先輩は軽い気持ちで付けたのかもしれない。
 それも首の後ろだ……。気を遣っての行動でもあっただろう。
 それでも、翠葉にとっては大ごとだった。ただ、それだけ――。
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