光のもとでⅠ
 気持ちはわからなくもない。
「……静さんがスーパーでお刺身を買われてきたのですか?」
 失礼かとは思ったけれども、あまりにも想像ができなくて尋ねてみた。すると、
「私のスーパーにね。ウィステリアホテルというところは非常に品揃えがよく鮮度も抜群なんだ」
 にこにこと笑いながら答えてくれた。
 そして、その答えに私と唯兄は胸を撫で下ろした。
 どうやら、唯兄が掃除をする前に炊飯器の予約だけはしていたようで、そのあと酢飯を作るとすぐに昼食になった。
 魚介類はどれも新鮮でとても美味しかった。
 それから、静さんお手製のエビの頭汁も。
「静さんはなんでもできちゃうんですね」
「なんでもはできないよ。それにこれはただ出せば巻いて食べられるものだろう?」
 いつも思う。
 どうしてこんなにすてきな人が独身なのかな、と。
 出逢いはたくさんありそうだけれど、忙しすぎて時間がないのかな……。
 奇妙な顔ぶれで昼食の時間が過ぎていく。
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