光のもとでⅠ
 湊先生が入ってくるのと入れ替わりで、
「じゃ、またあとで顔を出すよ」
 と、お父さんも部屋を出ていった。
「どこが痛いの?」
「手首……」
「どんなふうに?」
「骨が、砕かれるみたい……」
 先生が左手を診ようと手を伸ばしたとき、触れたか触れないかくらいで激痛が走った。
「いやっっっ」
「……栞、鎮痛剤を静注」
「わかったわ」
 自分の右手で手首をかなり強い力で掴んでいるというのに、人の触れる手があれほどまで痛く感じるとは思わなかった。
 痛みのレベルが今までとは桁違いで怖い。
 恐怖から涙が止まらない。
 来週末には梅雨が明けるというのに、私の痛みは引くどころかますますひどくなっていく。
 今年は例年と違う――。
 それは少し前から気づいていた。
 そして、きっと湊先生も気づいている。
 私、こんな痛みをあとどのくらい我慢できるんだろう――。
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