光のもとでⅠ
「あの、そうじゃなくてっ……。ただ、蒼兄がすごく優しい顔をしてるな、と思って……」
 蒼兄を改めて見上げると、
「そりゃ、好きな子に朝から会えたら嬉しいだろ?」
 真顔で言われた。
 もしかしたら蒼兄って意外と臆面のない人なのかもしれない……。
 あ、でも……シスコンと言われて堂々としているのだから、そういう人に間違いはないよね?
 ……ん? ということは私も……になるのかな。
 挨拶を済ませると蒼兄とはその場で別れた。
 昇降口から教室まで普通に歩ければ二分とかからない距離。けれども、今の私には五分ちょっとかけないとたどり着けない距離。
 私の歩く速度に桃華さんはひどく驚いていたけれど、何を訊くでもなく私の歩幅に合わせて教室まで付き添ってくれた。
 いつものことだけれど、最近は拍車をかけて顔色だって悪い。でも、やっぱりそのことにも触れずにいてくれた。
 それは桃華さんだけではなく、クラスメイト全員が……。
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