光のもとでⅠ
 確かに、いつもの翠ではなかった。
 けれども、だからといってものすごく通常と違うかと訊かれたら、それは違う気がする。
 気が触れたとか、そんな印象は受けない。
 いったい翠に何が起っているのか――。
 もともとこんな時間に電話をしてくるような人間でもない。
 時刻は十二時を回っている。
 兄さんや姉さんは知っているのだろうか。
 秋兄は? 栞さんは……?
 俺が誰かに訊いたところで口を割る人間はいなさそうだ。
 数日中に時間を作って幸倉へ行こう。
 翠に、会いに行こう――。
< 1,727 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop