光のもとでⅠ
「ひとつ訊きたいんですが……」
「何?」
「御園生さんたちはどんな説得してたんですか?」
「……実のところ、俺ら家族は入院の説得にはノータッチなんだ。ただものを食べさせようと躍起になってたくらい。……結局、水以外は口にしてもらえなかったけど」
「……入院の説得をしなかったのは姉さんの指示?」
 御園生さんと栞さんに視線をめぐらせる。と、「そうよ」と栞さんが答えた。
 姉さんは翠と一緒に処置室に入ったままだ。
「私は早期に戦線離脱。容易に近寄ったら危なかったわ。たぶん、自傷行為すら厭わなかったと思う」
 栞さんが困り果てた顔で言う。
「そう……迂闊に近寄ろうものなら、彼女は自分を傷つけた」
 御園生さんの向こう側に座っていた秋兄が、両手で顔を覆う。
「声は穏やかだし、表情も穏やかなんだけど、どうも近寄れない雰囲気があってね……」
 苦笑する栞さんにすら苛立ちを覚えた。
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