光のもとでⅠ
「だいたいにしてね、あんたの悪口雑言の語彙の少なさ……。司に聞いて呆れたわ」
「湊せんせ……」
「そんな言葉で傷つくほど、私たち柔じゃないわ。うちにはね、もっとかわいげのない弟や、やたらめったら頭の回転が速くて口の立つ人間が揃いに揃ってるの」
 確かに、藤宮の人たちには敵いそうもないけれど……。
「翠葉、どんなことから逃げてもいい。でも、私たちからは逃げないで」
 真っ直ぐに射抜くような視線からは逃れることができなくて、言葉も出なくて、ただ、目を合わせたまま頷いた。
 壁に寄りかかって立っているのとか、腕を組んでいる姿勢とか、視線の鋭さまでもがツカサと一緒。
「よし、この話はここまでっ。……で? 何よこれ」
 半分ほど残っている私のご飯を湊先生が眺める。
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