光のもとでⅠ
「ま、無理に思い出そうとしなくても自然と思い出すこともあるから、あまり深刻にならないように」
「……治療は?」
「残念だけど治療はないの」
 気持ちが悪い……。
 記憶がところどころ抜け落ちていることに気づくと、ものすごく気持ちが悪かった。
 吐き気とかそういうものではなく、曖昧な記憶が気持ち悪いのだ。
「夕方には司くんが来るって言ってたわ」
 言われて慌てる。
「知らない人にルームウェアで会うのは嫌っ」
 そう口にした途端、場の空気が白けた。
「あのな、翠葉……。病院に入院するとき、おまえを説得してくれたのも司だぞ?」
 蒼兄に言われて、半信半疑で見つめ返す。
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