光のもとでⅠ
「……は、翠葉」
 ん……まだ眠い。
 でも、肩を揺すられているというのは、「起きなさい」という意味なのだろう。
 重たい瞼を上げると、「司くんが来たわ」とお母さんに言われた。
「……え? あ……お母さんっ、私、寝起きっ。髪の毛ぐちゃぐちゃっ」
 慌てる自分にさらにパニックを起こしそうだった。
「翠葉翠葉、落ち着け。今、廊下で待ってもらってるから。髪の毛くらい梳かしてやる」
 蒼兄が髪の毛を梳いてくれた。
 梳かし終わった櫛をテーブルに置かれ、
「蒼兄、これ……」
「え?」
「この柘植櫛、買ってきてくれたの?」
「……これは、今年の翠葉の誕生日に、誰かがプレゼントしてくれたもの」
 まだ、"誰か"……。
 でも、少し要領は得たかもしれない。
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