光のもとでⅠ
 こういうの、どこかで最近見た気がするのだけど――。
 でも、長らく美容院へは行っていなかったし、美容院へ行かなければそうそう見る光景でもない。
 どうしてだろう……。
「頭、痛い?」
 小宮さんに訊かれて、手で額を押さえていることに気づく。
「あ、いえ……」
「そう? 髪の毛流してトリートメントするけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
 小宮さんは弟さんの話やトリートメントの説明をしてくれていたけれど、私はどこか上の空で、ずっと散らばる髪の毛のことを考えていた。
 でも、それ以上の何かを思い出すことはなかった――。
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