光のもとでⅠ
 昇さんはお医者様だものね……。
 手を尽くしても救えない命は救えないのだろう。
 けれど、そのたびに心を砕かれていたら、この仕事は務まらない。
 そのくらいは何も知らない私でも察しはつく。
 だから、話を逸らそうと思った。
「今日はお昼時にお兄ちゃんが来てくれるんですよ」
「上? 下?」
「下、です。唯兄」
 上下で訊かれたことに笑みがもれる。
「お仕事が忙しいみたいだけど、合間を縫って来てくれるみたい。色々と相談したいことがあったからすごく嬉しくて……」
「俺や栞に相談してくれてもいいのになぁ……」
 どこかいじけているように見えた。
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