光のもとでⅠ
「先輩、ハーブ園のところがいいな」
オーダーされなくてもそこへ行くつもりだった。
ここはミントの背丈が高く、裏側に人がいても見えない。
即ち、俺も翠も確信犯なのだろう。
「俺は裏ってこと?」
とりあえずの確認。
「ピンポンです」
翠は人差し指を立てて答えた。
俺はハーブ園の裏に回り、花壇の縁に腰を下ろした。
そうしていても、あちら側からは見えないくらいにハーブが茂っている。
母さんが見たら、「蒸れちゃうから適度に刈らないとだめ」とハサミを手にするだろう。
でも、このミントの香りはメンソールの香りに通ずるものがあり、好きだな、と思った。
翠は今、間違いなく緊張しているのだろう。
近くにいるとはいえ、この距離で俺ができることはなんだろう。
「数――」
そうだ、翠にだけ聞こえる声量で数を数えよう。
俺の声に気づいたのか、二クール目には自分の声に翠の声が重なった。
ブゥン、と自動ドアが開く音。
さぁ、俺はおとなしく透明人間になりますか――。
オーダーされなくてもそこへ行くつもりだった。
ここはミントの背丈が高く、裏側に人がいても見えない。
即ち、俺も翠も確信犯なのだろう。
「俺は裏ってこと?」
とりあえずの確認。
「ピンポンです」
翠は人差し指を立てて答えた。
俺はハーブ園の裏に回り、花壇の縁に腰を下ろした。
そうしていても、あちら側からは見えないくらいにハーブが茂っている。
母さんが見たら、「蒸れちゃうから適度に刈らないとだめ」とハサミを手にするだろう。
でも、このミントの香りはメンソールの香りに通ずるものがあり、好きだな、と思った。
翠は今、間違いなく緊張しているのだろう。
近くにいるとはいえ、この距離で俺ができることはなんだろう。
「数――」
そうだ、翠にだけ聞こえる声量で数を数えよう。
俺の声に気づいたのか、二クール目には自分の声に翠の声が重なった。
ブゥン、と自動ドアが開く音。
さぁ、俺はおとなしく透明人間になりますか――。