光のもとでⅠ

15

 ツカサの背を見たら急に心細くなって、自然ととんぼ玉を握る力が強まる。
 病室にふたりきりになると、一気にしんとした。
 空気がピリっとしていて、硬水の中にいる感じ。
 秋斗さんを見ると、にこりと笑顔を見せてくれた。
 でも、その笑顔の中にも緊張が見て取れて、余計に自分も緊張する。
 たぶん、この空気を作り出しているのは自分。
 今度は私の緊張が秋斗さんに伝染してしまったのだ。
「……最初から話そうと思う」
 秋斗さんは両手を顔の前で組み、祈るようなポーズで口にした。
「最初って……どこですか?」
 私は最初がどこを指すのかすらわからなかった。
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