光のもとでⅠ
 相馬先生は栞さんの姿を確認してから、
「この病気は自己免疫に関する病気でもある。人間ってのはよくできた生きもんで、生活が充実していれば病気知らずなんだ。それは身体に悪影響を及ぼすほどのストレスを感じていないから。適度なストレスはいい。が、過度なストレスは自己免疫力を下げ、全身の筋肉を硬直させる。すると、血流の流れも悪くなるうえに疲れやすい身体になる。眠ることだけじゃ疲労をリセットできなくなる。それが慢性疲労症候群って呼ばれるものだ。要は不定愁訴の羅列だな。疲れが身体を許容できなくなれば、身体中に痛みというシグナルを送り始める。それが今のおまえの状態だ」
 こんなにお医者様らしい相馬先生を始めて見た気がした。
 この場にはもうひとり驚いた顔をしている人がいる。
 栞さんだ――。
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