光のもとでⅠ
「上に行ってくる」
 静さんが言うと、
「静兄様っ、私も一緒に――」
 栞さんの申し出を静さんは断った。
「医者の手は足りている。十階で清良が待っているはずだ」
「俺は現状把握で行きたいんだがな。俺はスイハの主治医だ」
 相馬先生が名乗りを上げると、仕方ないといったふうで同席を認めた。
 静さんにエスコートされるまま廊下を歩き始めると、
「ちょい待てや。スイハはそろそろ限界だ。車椅子に乗せてけや」
 相馬先生は車椅子に手をかけた。
 静さんには「大丈夫かい?」と訊かれ、「私は大丈夫です」と曖昧に答える。
 私の何が限界なのだろう……。
 血圧? 心臓? それとも――。
 もう、何が大丈夫で何が大丈夫でないのかもわからない。
< 2,734 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop