光のもとでⅠ
「電話で聞いて知ってはいたけど、ここまで調子がいいとは思わなかった」
 エレベーターに乗り込み、じっと翠の立ち姿を見ていた。
 どこを庇うことなく歩いていたし、今も痛みを隠しているようには見えない。
「私もびっくりしてる」
 屈託なく笑う顔が俺を見た。
 そして、「聞いて聞いて」と言わんが如く、「今日ね」と口にした。
「聞いた」
「……私、まだ何も言ってない」
「家に帰ったら母さんが嬉しそうに話してきた」
 たぶん、翠が言おうとしているのはハナのことだろう。
 目がさ、ハナと同じなんだ。
「ちょっと残念。珍しく大きな出来事で報告ごとだったのに」
「俺は別の意味で残念。ハナを翠に会わせるのは俺だと思ってた。まさか父さんに先を越されるとは思ってなかった」
 翠は、「何それ」と笑う。
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