光のもとでⅠ
「わ、ハーブグリーンのお部屋!」
「どうかな? 女の子らしくピンクのカーテンのほうがいいかい? なんだったら明日にでも替えるよ?」
「い、いいですっ。あの、ピンクよりもグリーンのほうが好きなので――」
 さっきお母さんにも言われていたけれど、静さんは色んなことに関して過剰サービスをしすぎだと思う。
 ……それとも、藤宮の人たちが、なのかな?
「どうかしたかい?」
 静さんに訊かれて慌てて笑みを浮かべる。
「いえ、なんでもないです。ただ、広いなぁ、と思って」
「あぁ、私の家は上と下で二百三十平米近くはあるはずだ。十階と九階の部屋は皆同じつくりだが、八階からは3LDKだ」
 二百三十平米って――ひとつの階につき百十五平米!?
 それは広いはずだ。坪にすると一坪三平米ちょっとだから、約三十五坪くらい?
「広い、ですよね……。通常マンションなら広くても百平米くらいなのに」
 蒼兄は興味深そうに口にした。
 確かに……。幸倉周辺の家を基準に考えてみると、戸建てならば三十坪に一軒建てるくらいだろう。
 しかも、戸建てならば建蔽率や延べ床面積の規制もあるから、敷地内に目一杯建物を建てることは無理な話だ。
 だいたい三十坪に対して建蔽率が五十パーセントから七十パーセントであることが多い。そこからすると、二階建てでも五十平米から七十平米が妥当――。
 ペンシルハウスのように建蔽率が百パーセントだったとしても、そのような場所は十五坪から二十坪くらいの土地があれば良いほうで、一階は前面前開きのカーポートになることが多く、二階三階の居住部分としては五十平米から六十五平米がせいぜいだろう。
 少し考えただけでも延べ床面積の合計が七十坪というのは贅沢だと思う。
 でも、プライベートルームがこの九階と十階というだけで、もしかしたらこのマンション自体が静さんの持ち物かもしれなくて――。
 やめた、考えるのはよそう……。
 自分のモノサシと静さんのモノサシは絶対に違う。
< 310 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop