光のもとでⅠ
 確かに胸痛はつらい。不整脈も動悸が速くなるのもかなりつらいし不安にもなる。
 眩暈や失神を起こせば周りの人に迷惑がかかる。
 でも――。
「私は運がいいと思うんです」
 私の言葉に栞さんと司先輩が訝しがる。
 そんな顔、しないで……?
「だって、私には信頼できるお医者様がついているもの。紫先生に湊先生、それから今度は楓先生も加わるって言ってました。すごく強力な味方でしょう? それに普段は栞さんも側にいてくれるし……。こんな状況、普通ではあり得ないと思うんです」
「それでも、翠葉ちゃんはなかなかつらいって言ってくれないのよね」
 栞さんは困った人の顔になる。
「翠葉ちゃん、私の旦那様も医師なのよ」
「え……? 栞さんの旦那様?」
「そう。今は海外研修に行っているの」
「昇(しょう)が帰国するのはいつだ?」
 静さんがこちらの会話に口を挟んだ。
「八月の予定。早ければ七月末って言っていたけど、どうかしらね」
 しょう、さん……。栞さんの旦那様。どんな人だろう……?
「帰ってきたら翠葉ちゃんにも紹介するわ」
「はい、楽しみにしています」
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