光のもとでⅠ
 普段、お祭りや花火大会には行かない。
 人ごみで人酔いしてしまうし、休む場所が意外と少ないから。
 だから、いつも遠くから小さく見える花火を眺めるだけだった。
 花火とは浴衣を着てお庭でするもの。
 それが私の認識、プラス経験則――。
 けれども、煙を吸えば喉が痛むし咳が出る。ひどいときにはアレルギー鼻炎のような症状もプラスされ、喉を腫らして熱を出す。
 そんなわけで、私と花火とは縁遠い。
「病室、戻らないとだめ……?」
 エレベーターの壁に身体を預けたまま訊くと、
「病室からだって見られなくはない」
 確かにそれは間違いない。
 でも、
「ツカサ、屋内から見るのと屋外で見るのは違うと思うの」
 だめもとの抗議。
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