光のもとでⅠ
「翠葉ちゃん、泣いていたの?」
 トレイを片手に持ってきた栞さんに訊かれる。
「あ、えと……なんでもないです」
「吐き気、きつい?」
 トレイをテーブルに置き、私の額に手を当てたり手を握ったり足を触ったりする。
「そんなに冷えてはいないわね。でも、顔色は良くないわ」
「……横になったら吐き気は治まりました。大丈夫です」
「じゃぁ、なんで泣いていたの?」
 少し遠慮気味に訊かれた。
「……嫌な期間に入っちゃったな、と思って……。だから、体がつらいとかそういうのではないです」
「そう……。つらいこと、少しでも吐き出せそうなら言ってね。いつでも聞くから」
「はい……」
 栞さんは優しいから、すごく優しいから、絶対に傷つけたくない――。
「寝たままでいいわ。口もとまで運ぶから少しずつ飲み込んで?」
 と、いつもドロドロのスープを口まで運んでくれる。
 本当に少量。ティースプーン一杯弱くらいの分量。
 口に入るとそれが口の中に広がり少しずつ少しずつ飲み下す。
「味は大丈夫?」
 と、不安そうに訊かれる。
「美味しいです。でも、少しずつしか飲めないから、栞さん疲れちゃいますね」
「やぁね。私、これでも元看護師よ? こんなの慣れっ子です。さ、そんなことは気にせずどんどん口に運ぶわよ!」
 栞さんは努めて明るく接してくれた。
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