光のもとでⅠ
 もし、今翠葉があの男を好きになったとしても、未練はないし背中を押してあげられる。
 入学したての頃に牽制したのは、ただ自分の視界に入れたくないから翠葉を近づけたくなかった。
 結果、無駄だったけど……。
 翠葉はあの男に惹かれていたし、また、あの男も翠葉に惹かれた。
 あんた、女子を眼中に入れたのってこれが初めてなんじゃない?
 しかも、相手は翠葉。
 超がつくほどの美少女で、超がつくほど鈍い子。
 いい気味だわ。
 片思いがどれほど切ないのか、思い知ればいいのよ。
 でも、もし――。
 翠葉があんたを好きだと心を決めたのなら、ふたりの背中を押してあげる。
 ふたりが幸せになれるように。
 そうね……それまでは藤宮司をトラップにかけるのを生きがいにするわ。
 蒼樹さん、紅葉祭はとても楽しくなりそうですよ。
 ぜひ、OBとして見にいらしてくださいね。
< 3,781 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop