光のもとでⅠ
「さっぱりした?」
 一仕事終えました、という感じで腰に手を当てて訊かれる。
「とても……。体が起こせるようになるまで髪の毛は洗えないと思っていたから、すごく嬉しかったです」
「そうね。髪の毛がベトベトしてるのは嫌よね」
 でも、そうそう言えるわがままではないから人には会いたくないと思っていた。それをこうも簡単にクリアされるとは思ってもみなくて、本当に嬉しかったのだ。
 髪の毛が清潔に保たれているだけでも精神上のモチベーションが変わる。
 人が人らしくいるために、清潔さが欠かせないと知ったのはいくつのときだっただろう……。
 それに気がついてからは具合が悪くてもお風呂だけは……というのが私の最上級のわがままになり、いつも蒼兄やお母さんを困らせていた。
 私にとってはQOLの最上位にくるのだけど、周りの人にはあまり理解されない。
 けれど、栞さんはわかってくれる。それが嬉しかった。
 でもそれは、看護師さんだったからなんだろうな、とも思った。
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