光のもとでⅠ
「これ、沙耶から渡すようにって言われたんだけど」
 見覚えある黒いケースを渡された。
 ケースの中には思ったとおりのものが入っている。
 ワイヤレスイヤホン――藤宮警備が使用している無線イヤホンだ。
 それを耳にセットすると、会話が聞こえてきた。
『あなた、藤宮くんのなんなわけ?』
 その言葉から始まった。
 呼び出しって本当にこういう内容なんだな。
 バカらしい……。
 イラつくと審判の判定にもそれが響くようで、さっきから笛を鳴らしてばかりだ。
 不満そうな顔がこちらを向くが、それで俺に何か言う人間はいないらしい。
 しょせん、そんなもの……。
 そう思っていると、審判席が揺れた。
 足元を見下ろすと、今度は朝陽が審判席の脇に立っていた。
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