光のもとでⅠ
 蒼兄がベッドサイドまで来ると、
「翠葉、言葉を選びすぎるのも良くないぞ」
「え……?」
「まずは謝ることが先決だろ? そのあとのことはそのあとに考えればいいんだよ」
 と、口もとに運ばれてきたメロンを口にする。
「……甘い」
「良かったな」
 木苺は甘酸っぱくて、夏みかんはそれとは違う甘酸っぱさだった。ミントの葉は口の中をサッパリとさせてくれる。
「美味しい……」
 頬が緩むのが自分でもわかった。
「……やっぱ先輩呼んでくるよ。これを食べてるときはそういう顔できるだろ?」
「えっ!?」
 蒼兄はにこりと笑って部屋から出ていってしまった。
「……どうしよう――」
 違う、どうしようじゃなくて謝らなくちゃ……。
 謝るときの言葉は全国共通ごめんなさい、だ。
 でも、ごめんなさいの理由も話さなくちゃいけないだろうか……。
 数分もせずに蒼兄が秋斗さんを連れて戻ってきた。
「そ、蒼兄っ、ひとつだけ教えてほしいっ」
「何?」
「あのっ、謝るときって、横になったままでも失礼じゃないっ!?」
 沈黙の間が一瞬。直後、蒼兄と秋斗さんは笑い出した。
< 409 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop