光のもとでⅠ
 持っているものをすべてを取り上げられるのが嫌なんだな。
 そういうのが少しだけわかった。
 彼女の手からトラベルラグはベルボーイの手へと渡る。
 彼女の視線はまだトラベルラベルラグに張り付いていた。
 それも束の間――顔を上げ、手を後ろで組む。
 まるで、持つものがないから自分の手を掴む、そんな感じに見えた。
 その手持ちぶたさの手を俺が掴みたかった。
 ここに、その手を必要としている人間がいると――。
 どうしたら伝えられるのか。
 どうしたらその手を取れるのか。
 どうしたらこの距離を縮められるのか――。
 考えても考えても答えが出ない。
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