光のもとでⅠ
「え?」と口にした私の声は、三人の「はっ?」という大きな声に打ち消される。
「俺の寝室からなら空が見えるから」
 秋斗さんは私の顔を見て言った。
 お昼に話したことを覚えていてくれたんだ……。
「今日、俺がゲストルームに来たとき、このお嬢さんどこにいたと思う? リビングのソファの裏に転がってたんだよ。理由を訊いたら空が見たかったって言うから……」
「翠葉らしいけど……でも、風邪でもひいたらどうするんだ」
 と、蒼兄に怒られた。
「最初はソファの位置をずらしてあげようかと思ったんだけど、長時間横になってるならやっぱりちゃんとベッドに横になるほうがいいと思うんだよね」
「ま、確かにソファで横にならせるよりはベッドのほうがいいけど……」
 湊先生は言葉を濁す。
「わかったわ……。美波さんの巡回があってもいいなら秋斗くんに任せる」
 そう言ったのは栞さんだった。
「別にかまわないよ。家なら俺も普通に仕事できるし」
 と、秋斗さんが優しい顔で私を見た。
「若槻もね、ホテルでの仕事さえ済んでいれば俺の家で仕事ができるんだ」
 言われるまですっかり忘れていた。私の第ニのお兄ちゃん……。
「今日も会いたそうにしてたよ」
 と、秋斗さんが教えてくれ、完全に忘れていたことを申し訳なく思う。
「明日には翠葉ちゃんのノートパソコンの改良を済ませて持ってくる」
 そんなこともすっかり忘れていた。
 若槻さん、本当にごめんなさい――。
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