光のもとでⅠ
『なんですか、気持ち悪い』
「あのさ、俺はどうやっても俺でしかないんだ」
『そんなのわかってますよ。何年の付き合いだと思ってるんですか。もう、これ言うの二回目か三回目ですよ?』
 電話の向こうで苦笑する声が聞こえた。
「彼女を追い詰めるつもりはない。けど、もう一度――全力で口説きにかかってもいいかな?」
『……やっと覚悟できましたか? ……いいですよ。でも、知ってのとおり、翠葉は難攻不落のお姫様ですけどね。――あとで迎えに行きます』
 通話が切れたあとも携帯を耳に当てていた。
 最後の言葉は温度のある言葉に思えた。
 あたたかい言葉……。
「先輩がそういう人じゃなかったらどういう人なんですか?」と、蒼樹が笑う顔が見えた気がした。
 この兄妹にはやられっぱなしだな。
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