光のもとでⅠ
「ううん……その代わり、手――貸してもらえる?」
「手……?」
「うん」
 海斗くんは不思議そうな顔をしつつも、「これ?」と右手を差し出してくれた。
「手、つないでもいい?」
「……翠葉、本当にどうした?」
 私がつなぐまえに海斗くんに手を取られる。
「これが何?」
 目の高さまで持ち上げられて考える。
 海斗くんは秋斗さんに似ていて、至近距離で覗き込まれるとドキリとする。
 でも……今、こうやって手をつないでいても何も感じない。
 安心とかドキドキとか、そういうのはない。
 ただ大きな手だなって……節くれだっていて、男子の手だなって思う。
 ツカサとも秋斗さんとも違う。
 ……あのふたりは何が違うのかな。
< 4,644 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop