光のもとでⅠ
 そんな顔で彼女は俺を見つめてくる。
 君は自分の外見を自覚すべきだと思う。
「人に見せて歩きたい反面、人目に触れさせるのが惜しくなるくらいにきれいだと思った」
 自分でも嫌になるくらい顔が熱い。でも、彼女を視界に入れたくて顔を上げる。と、
「秋斗さん、顔――」
 彼女は中途半端に俺を指差した。
「わかってる……。いつもからかっててごめん」
 きっと俺はあり得ないほどに赤面しているだろう。
 バックミラーに移る自分を見て、げんなりとする。
 思わず苦笑する程度には赤かった。
「じゃ、行こうか」
「……はい」

 まだ顔が熱いものの、何事もなかったように車を発進させた。
 カーステから流れてくる曲はDIMENSIONの"Key"というアルバム。
 以前彼女が好きだと言っていたものだ。
 それを聞きながら思案する。
 これから彼女をどこへ連れて行ったらいいんだろう――。
 最初は買い物に付き合ってもらおうと思っていた。でもそれは、彼女の体調を考慮してやめた。
 少しゆっくり歩ける広い公園を予定していたものの、日曜日ともなれば人出が多いだろう。
 今日の彼女はどこへ連れて行っても人目を集めてしまう気がした。
 そのうえ、俺には振られる予定まで入っている。
 彼女との大切な時間に不躾な視線は感じたくない……。
 そうこう考えているうちに藤山の周りを一周してしまった。
「秋斗さん……」
「うん、わかってる。ちょっと決めかねててね」
「行き先、ですか?」
「そう」
 ちら、と彼女を見て、
「やっぱり人には見せたくないな」
 今日は俺ひとりに独占させてほしい――。
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