光のもとでⅠ
「……少し、甘えてもいいですか……?」
 つないだ手を見たまま彼女が訊いてくる。
「珍しいね。……いつでも甘えてほしいと思ってるんだけど、いつもはなかなか――」
 いい終わらないうちに胸にトン、と小さな衝撃。
「すい、は、ちゃん――?」
 胸に、彼女の額が預けられていた。
「ごめんなさい……。少しだけ、少しだけでいいから……」
 それを聞いてしまったら、彼女を抱きしめずにはいられなかった。
 自分の手に、腕に、しっかりと彼女を感じる。
「少しだけなんて、そんなもったいないこと言わないで。俺はずっと抱きしめていたい」
 本当に少しの間、二分もしないうちに離れようとする彼女。
 まだ放したくなくて、腕に力をこめた。
 腕の中で彼女が潰れないように、最新の注意を払って抱きしめる。
「翠葉ちゃん、俺もひとつお願いしていいかな」
 キスがしたい――。
 彼女は何か考えるところがあるようで、少しの間を置いてから返事があった。
「聞けるものならば……」
「……ずいぶんと答えまでに時間がかかったね。……キス、してもいい?」
 俺の言葉や要求にびっくりしているという感じではなく、ただ何か躊躇している、そんなふうに見えた。
「ごめん、訊いたけど答えを待てそうにはない」
 と、彼女の唇に自分のそれを重ねる。
 つい出来心で舌を入れた。
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