光のもとでⅠ
「詰めが甘すぎ。自分を追い詰めるようなことをして、最後まで身が持たなかったら意味がないだろ」
「……だって、どれもつらかったの。訊かれないことも隠しておくことも打ち明けることも――本当は誰にも何も気づいてほしくなかった」
 筋金入りのバカ正直な人間。
 俺、なんでこんな人間好きになったかな……。
 どうやったら翠に「狡猾さ」なんてものを教えられるだろうか。
 翠が少しずるくなったところで、罰は当たらないと思う。
「俺が突きつけなければそのままでいられた?」
 今、この状況を作り出したのが俺であることに違いはない。
 なのに、
「それは違う……」
 翠は頭を振る。
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