光のもとでⅠ
 ことの発端を作ったのは俺だけど、できることならしばらくは翠の泣き顔を見たくないかもしれない。
 ――違うな……。
 人の前で、俺以外の人の前で泣かれたくない。
 ほかの誰を頼るより先に俺を呼んでほしい。
 これが独占欲なのだろうか。嫉妬、なのだろうか。
 翠はベッドへ横になると、
「あのね、少しだけでいいの。手、つないでもいい?」
 ますますもって「御園生さん化」が始まっているんじゃないか、とは思いもしたけど、入院中から「手をつなぐ」という行為は日常化していた。
 学校が始まってからその回数が減っていただけのこと――とでも思わないとやっていられない。
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