光のもとでⅠ
「そうです。これからの私は飲む薬の分量が増えて、まともに日常生活も送れなくなります。それで一緒にいるのなんて無理だし、第一、そんな自分は見られたくない。話をすれば傷つけることを言ってしまうかもしれない。……好きな人を傷つけたいとは思わないでしょう? でも、これからの私はそんなコントロールすらできないほど余裕がなくなります。だから……だから、一緒にはいられません」
 きっとこれは嘘じゃない。用意されたものでもなく、限りなく彼女の心に近い本音の部分。だから、芯がぶれない。
 それなら仕方がないだろう……。
「じゃぁ、待つ、かな……。翠葉ちゃんに余裕ができるまで」
 そう言うと、彼女はやっと顔を上げ俺を見た。
「何? 予想外って顔をしてるけど」
 すごく悩んでくれたみたいだけど、ごめんね。
「あのね、一度振られたくらいじゃ俺は諦めないよ? それに、俺を振るんだ。今後は覚悟しておいて。今まで以上に口説きにかかるから」
「この人は誰だろう?」と、そんな顔で見られる。
 翠葉ちゃん、俺は俺、だよ。
「悪いけど、こんな断り方で俺が身を引くとは思わないように。うちの血筋は諦めがわるいことで有名なんだ」
 にこりと笑みを向ける。
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