光のもとでⅠ
「翠を起こしてきます」
 茜先輩に言うと、
「もう少し休ませてあげない?」
「翠の、良心の呵責を考えると延長三十分が限界だと思います」
「それもそうね……」
 カウンター奥のドアロックを面倒臭い手順を踏んで解除した。
 インターホンを押したくなかったから。
 その音で翠を起こすことも、秋兄のロック解除で入室するのも、どちらも自分が受け入れがたくて……。
 中に入ると、俺に気づいた秋兄が席を立つ。
 俺と秋兄の中間あたりにあるソファまで来ると、「ぐっすりだよ」と笑った。
 背もたれ側から覗き見ると、寝息を立ててすうすうと眠る翠がいた。
 これは確かに起こしづらい……。
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