光のもとでⅠ

13 Side Shin 01話

「はぁ……」
 思わずため息がもれる。
 俺の上司、藤宮秋斗様は今日も職場にいらっしゃらない。今日も、だ。今日もっ。
 それが指すのは昨日もいなかったということ。正確には、昨日の午後から雲隠れ。
 デスクにある電話の受話器を置く。次に携帯から携帯へかけるもつながらない。自宅の電話も応答せず。
 基本は連絡がつく人なんだが――。
 とりあえず、秋斗様の行動範囲を反芻する。
 高校敷地内にある職場、自宅、実家、本社――そこにいないとなれば、ほかに考えられるのは御園生家か唯のところだな。
 気を取り直して唯の携帯にかけると、ニコールもしないうちに応答があった。
『はい、若槻です』
「俺だけど、そこに秋斗様いたりしないか?」
「いますよー。ただいま失恋中にて使い物にはなりそうにありませんが」
「やっぱ唯のところだったか……。今から行く。悪いけど、今日はそこで仕事させて」
 そう言って携帯を着ると、必要な書類だけをかき集めて部屋を出た。

 ここからホテルまで、道が混まなければ十分とかからないだろう。
 秋斗様の行動範囲は基本狭い。というより、夜遊び以外は外にあまり出ない。
 仕事も好きらしく、意外と真面目にそつなくこなす。が、最近は年下の女の子にご執心で、こっちに仕事を振ることを覚えた。
 今まではなんでもかんでも自分でやらないと気がすまない性分だったのに……。
 人に仕事を振れるようになったことはいいことだと思うが、何分俺に振られてもできないものはできないわけで……。
 そのあたりはもう少しご考察いただきたい。
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