光のもとでⅠ
「黙っててくれたんでしょ? 知ってたのに……」
「……あのさ、必要最低限、主語述語目的語は欲しいんだけど」
「だからっ、静との婚約のことっ」
 あぁ、と思う。
「どうしたら俺にばれないと思えるのかが未だに不思議でならないんだけど」
「……いつから知ってたのよ」
「いつから? そんなの忘れた。とりあえず、酒に潰れた姉さんを介抱してるときに知ったのは確か」
 酒、弱いんだから気をつけろよな、とは思った。
 けど、そんな姉さんを連れ帰ってくるのはいつも静さんだった。
 そこからして計算づくにしか思えない。
 静さんは俺が気づくことを知っていながら姉さんを送り届けていたとしか思えなかった。
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