光のもとでⅠ
「ステージで歌うんだから、聴いている人がひとり増えようと十人増えようと、何も変わらないわよ」
「それはそうなんだけど……」
 届けたい想いがある。
 そして、届けたい人もいる。
 でも、観覧席にはそれ以外の人たちもたくさんいるのだ。
 本番当日になっても、まだそのことを直視できない自分がいた。
 人前で何かをするのが苦手なことに変わりはない。
 ただ、そればかりを気にしていたら、本当に何もできない人になっちゃうから――。
 私は「ありがとう」を伝えたい。「大好き」を伝えたい。
 だから、がんばろう――。
「がんばるのも結構。でも、あまり力みすぎないようにね」
 キッチンから出てきたお母さんに肩をポン、と叩かれた。
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