光のもとでⅠ
「そうなんだ。基本は俺と栞さんに任せ切り」
「御園生さんとお姫さんはよくぐれませんね」
「放任と放棄は違うんだよね。うちの場合は一応信頼されている。そのうえでの放任なんだ。ちゃんと俺たちのことを見てくれてはいる。けど、手出しはしない……そんな感じかな」
 彼はとても小さな声で、「羨ましい」と言った。
「……どうしたら君は楽になれる?」
 訊くと、
「つらいわけじゃないですよ」
 そんな顔をしていてつらくないわけがない。
 どこか翠葉と似た部分を見つけた気がした。
「今日のお礼にひとつだけお願い事を聞いてあげる。若槻くんがしてほしいこと、何かないかな?」
 言うと、彼は「は?」って顔をした。
 けれども、すぐに顔を改め何かを考え始める。そして、
「後悔しても知りませんよ?」
「……なんだろう?」
「お姫さんを妹にください」
 今度は俺が、「は?」と言う番だった。
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