光のもとでⅠ
 朝陽先輩がいつものようにツカサに絡むと、
「翠葉ちゃんって本当に面白い子だよね」
 ツカサはうざったそうにその腕を払い、私は「全然面白くないです」と答えた。 
 だって、今の私はどこからどう見ても困っている人のはずだもの。
「緊張でもしてるんだろ?」
 ツカサはそう言うと、私の頭に手を置いた。
「ステージに上がったら観客はみんなイモやカボチャ、そこらに転がってる野菜だと思えばいい」
 そのあと、待ち時間に座っている場所へと案内された。
「椅子が用意されているけど、つらくなる前に床に座れ」
 パイプ椅子の脇にはビーズクッションが用意されていた。
「ありがと……」
「どういたしまして」
 ぶっきらぼうなのに優しさだけは細やかに感じる。
 それが嬉しくて、心がほわりとあたたかくなり、さらにはどこかくすぐったくもある。
 けれど、私はその感情に名前があることをまだ知らなかった――。
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