光のもとでⅠ
「翠葉ちゃん」
 隣に座る茜先輩から声をかけられた。
「すごく良かったよ! 今までで一番!」
 笑ってそう言ってくれているのに、私は違和感を覚えずにはいられなかった。
 無理して笑っているわけではない。だって、茜先輩はとても「普通」だから。
 でも、その普通は、無理していない笑顔は、「演じている」というほうがしっくりきてしまうのだ。
 演じているのだとしたら、なんのために?
 その答えは出ないのに、「演じている」という直感には疑問を抱かなかった。
 私の歌は茜先輩にも届いたかな。
 ちゃんと、届いていたらいいな……。
 私はまだピアノの前にいた。
 さっき口にしたペットボトルはずっと私の前に置いてあり、目を離したわけではない。
 だから、飲める――。
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