光のもとでⅠ
「低音弦はピッチ維持してるので、ここから合わせます」
「耳がいいのね」
「どうでしょう……」
 ほんの少し笑みを添えて答えた。
 ナイロンの太い弦ならば、すぐに張替えは済む。
 けれど、張り替えたばかりの弦は音が安定しない。
 それに、このハープ自体、ワイヤー弦以外の音が全体的にずれ始めている。
 張替え作業よりもチューニング作業に時間が取られそう……。
 弦の張替えが済み、チューニングに移ったとき、
「椅子、座れば……」
 葉月さんに言われた。
「あ、りがと……」
 すこし間抜けな返答だったのはびっくりしたから。
 敵意がなくなったわけじゃない。
 でも、楽器に触れることは許してもらえた気がした。
 それだけで十分――。
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