光のもとでⅠ
「違うっ、私が……私が――」
 今にも起き上がりそうな勢いで彼女が口を挟んだ。けれど、まだ普通に話すことはできないようで、言葉にならないことがもどかしいのか、より悲愴そうな顔をして涙を流す。
「翠葉、また過呼吸になるわよ?」
 彼女は湊ちゃんの言葉に口を噤んだ。
 ……これ以上、俺がここにいていいことはないだろう。
「翠葉ちゃん、ごめん。俺、今日は帰るね」
「いやっ――ちゃんと、知りたい……」
 彼女は涙ながらに訴えた。
 まいったな……。
 本当に悪気はなくて、気持ちの上では俺と向き合ってるつもりなんだ。
 俺の幸せっていうものを彼女が考えた結果、自分のような人間ではなく健康な人のほうがいいだろうと、真面目にそう考えたのだろう。
 自分の体調で迷惑をかけるなら、とそこまで考えてのこと――。
 なんていうか、謙虚とかそういう域じゃない。これは"卑下"だ。
 自分に価値を見出せてない。
 自分の中に確固たる価値観は持っていても、自分という人間の価値をわかっていない。
 これ、相当な強敵だ……。
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