光のもとでⅠ
 いったいどうやったらあの顔がこの時間で元通りになるんだか……。
 女の化粧がいかに怖いものなのか、茜先輩のセルフケアが完璧なのかはわかりかねる。
「お待たせっ! 翠葉ちゃん、ケープありがとう! 嵐はこれお願い」
 化粧ポーチを嵐に預け翠にケープをかけると、
「さ、ステージに上がろう!」
 茜先輩は翠に手を差し伸べた。
 翠は頷き、室内ブーツを脱いでその手を取る。
 大丈夫、なのか?
 ふたりはどこからどう見てもいつもと変わらないように見えるけれど、翠の目は心配の色が濃い。
 ふたりはそのままステージへ上がった。
 それを見届けると、俺は壁に寄りかかりモニターの映像を眺める。
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