光のもとでⅠ
 きっと、俺も秋兄も茜先輩と変わらない場所にいた。
 翠はそこへするりと入り込み、それがあまりにも自然すぎて、俺たちは物理的な「警護」を怠った。
 結果的には俺たちがバカで間抜けすぎたって話だけど、それでも翠にはそういう才があると思う。
 何もできないと言う翠に、少しは自覚したらどうだと言いたくはなるものの、これはこれで意識せずにやっていることだから意味を成しているのかもしれない、と思えば口にできることではなかった。

 奈落に降りてきた翠のマイクを受け取り、さっきの飲みかけ、水割りリンゴジュースを渡す。
 すると、それを両手で持ち、コクコクと喉を小さく上下させながら美味しそうに飲んだ。
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