光のもとでⅠ
 秋兄や兄さん、姉さんを羨む前に自分にできることがあるだろう。
 翠だって、ほかの人間を羨まずとも自分にしかできないことがあるはずだ。
 翠の歩く道は平坦とはいいがたく、俺が歩く道は舗装されていて石ころすら落ちていない。
 そんなふたつの道が重なれば、少なくとも互いにメリットがあるんじゃないかと思えた。
 でこぼこ道の翠は少し歩きやすくなり、俺は知らなかった障害物を知ることができる。
 そんな少しの変化を楽しみながら歩けるような――そんな気がしたんだ。
 目指す場所がゴールとは限らない。
 きっと、ゴールなどあってないようなもの。
 だから、常に明日を目指して歩みを進められればそれでいいと思う。
 そんな日常を重ねていけたなら、いつか、その日々を「宝物」と呼べる日がくるかもしれない。
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