光のもとでⅠ
 俺と秋兄を一緒にしてくれるな……。
 翠に視線を戻せば、キョロキョロとしていたのも束の間。
 視線は図書棟脇の階段下に固定されていた。
 そこでは会長たちがこっちを見て手を振っている。
 俺は小さくため息をつく。
 ため息というよりは翠と話すための前準備、言わば深呼吸みたいなもの。
「今日も俺を避けるつもり?」
 訊くと、翠の眉がハの字型になる。
 それはきっと、「ごめんなさい」か「困ってます」のサイン。
 わかってはいるけど、俺もここだけは譲れない。
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