光のもとでⅠ
「もう大丈夫なの?」
「うん。昨日には熱も三十六度台に下がっていたの。ただ、もう一日様子を見ましょうって言われて休んだだけで……。だから今日はもう大丈夫」
 それは本当。嘘はひとつも含まない。
 でも、桃華さんは私の顔をじっと見て、
「その割には元気がないように思えるけれど?」
「……体力落ちちゃったかな? あ、落ちる以前にもともとの体力がないのだけど」
 心を占める本音を隠したくて言葉を追加した結果、自虐っぽくなってしまった。
 それが桃華さんの心に引っかかったのだろう。
「……何かあった?」
「……ないよ? どうして?」
「……なんとなく、かしらね? でも、『ない』のね?」
 桃華さんは前方の階段へ視線を戻した。
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