光のもとでⅠ
 マスクは顔の半分を隠してくれる。
 同じ分だけ表情も隠してくれるし、口を押さえている気もするから「嘘」や「余計なこと」を話さずにすむ気がした。

 五分もするとクラスは人で賑わい始めた。
 みんな、「久しぶり」「復活おめえとう!」と、いつもと変わらないあたたかな言葉をかけてくれる。
 中には「インフルエンザなんて災難だったね」なんて言葉も混じっていた。
 私はそれらに、「うん」「ありがとう」「本当にね」なんて答えていて――いつの間に、こんなふうに自然と受け答えができるようになっていたのかな、なんて不思議に思った。
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