光のもとでⅠ
 気が重いといつもに増して動作がゆっくりになる。
 それでもジャケットは返しに行かなくてはいけない。
 秋斗さんが図書棟にいるのかは行ってみないとわからない。
 事前に行くことを伝えておいたほうが良かったのかもしれないけれど、連絡をする勇気が私にはなかった。
 連絡すらできないのに本人に会いに行こうとしているのだから、どう考えても無理がある。
 でも、もし秋斗さんがいなかったとしても、「返しに行った」という行動を取った自分になら言い訳ができる気がしていた。
 そんなの、また返しに行かなくちゃいけないのだから、同じことの繰り返しになるのに。
 効率の悪さとかそういう部分にまで頭が回っていなかったと思う。
 図書室の指紋認証をパスして中に入ると、秋斗さんの仕事部屋のドアが開いた。
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